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グローカルな視点で地域づくりを活動する支援する Furusato Mirai

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秋津野マスタープランで行政との新しい関係

 多額の税金やお金をかけたマスタープランが実践されないまま、絵に描いた餅で終わることは行政や多くの組織体でよく見受けられることであります。ほとんどが組織長や首長のマスターベーションで終わります。
 しかし、上秋津地区ので取り組んだマスタープランづくりは平成14年に完成以来、このプラン内容や地域の背景、また今後の目的を、すべての住民にわかりやすく伝わるよう、『秋津野塾未来への挑戦』として物語風の一冊の本にまとめ地区の全世帯に配付をし、インターネットでも公開を行いました。
 こうして、まとまったマスタープランを田辺市に説明し、これが住民の描く上秋津地区の将来の姿だと提案を行って来ました。私たちの地域づくりは、決して、行政に背を向けているわけではありません。ずっと協働でやってきました。大切なのは、住民と行政が同じくらいの力を持っていないと、協働は実現できません。だから住民も行政に対してはっきり考えを伝える。逆に行政も、住民らに提案をしてくる。そうして初めて、連携、協働ができるようになってきました。様々な地域づくりやソーシャルビジネスを通じて、行政との新しい関係の構築も同時にすすめてまいりました。 

初めてのソーシャルビジネスへ〜住民出資で直売所を開設

旧秋津の直売所直売所『きてら』外観 バブル崩壊後、国内ではデフレ経済が加速し、農産物販売に於いても価格だけで勝負する量販店の台頭で卸売市場での価格決定のメカニズムも変わり、農家にお金が返ってこなくなってきました。地域にとっては、農業が地域経済を支えている現状をみても、また、農業の将来性ということを考えた時に、従来のような、農協(卸売市場経由)にすべてお任せするようなやり方では、地域経済が立ち行かんようになるという懸念が高まってきた。このことは、これまでの地域コミュニティーづくりや活性化イベント、ハード整備事業とは別の地域づくりの必要性がたかまった。今後は、新しい農業のやり方を考える必要があるだろうと、地域づくりの考えから農産物直売所をつくることになりました。
 旧直売所『きてら』店内 生産した農産物に自分たちで値段をつけて、直接消費者の皆さんに買ってもらおう、お年寄りの生き甲斐の場を提供しよう、考える農家(挑戦する農家)を育成しようと、それまでの地域づくりに共感した住民31名が、それぞれ10万円ずつ出資して、10坪の中古のプレハブで農産物直売所『きてら』をつくりました。
 この時の出資には、農業者以外にも、商業者、サラリーマンと、さまざまな職業の人が参加した。だが、経営はなかなか軌道に乗りませんでした。しかし、この時も私たちは、みんなで打開策を考え、柑橘類を始め、農家がつくった味噌や梅干しなど、上秋津地区の特産物を詰め合わせた〈きてらセット〉をつくり、今までに来てくれたお客さん、または各農家さんが付き合いのあった全国のお客さんに向けて案内を出したり、さらに、地元のテレビや新聞に取り上げて頂き、地域の様子なども含め、広く情報発信を行い、当時200セットでありましたが完売し、直売所倒産の危機から救いました。
 3年後には『きてら』の年間売上は4500万円になりました。プレハブの10坪の店舗に限界を感じ新しく移転計画をたてることとなりました。
 さらに2003年には、地元から新たに32名、さらに地域外から20名の出資者が加わり、売り場面積を2倍にした店舗を新築オープンさせました。またこの時、農産物加工施設として「きてら工房」も併設。地域の女性グループによる、地域の作物を使った加工品の開発・販売もスタートしました。
新築移転された秋津野直売所『きてら』

ミカン農家の最大のモッタイナイを6次産業化で

JAに集荷された加工用ジュース原料 新しい直売所の運営が起動に乗のる中、平成16年には、農工商の連携事業として、ジュース工場建設計画が持ち上がりました。この計画を実行するのに、直売所『きてら』で銀行からの借り入れで工場建設も考えましたが、せっかく直売所の移転を果たし、経営も軌道に乗りかけているときに、大きな借入をし、もし、ジュース工場が失敗することにもなれば、直売所も共倒れの危険性が高いと判断しました。
 ジュース工場建設に向け、地元住民を中心に31名が50万円ずつ、新たにお金を出しあいました。自分たちでミカンの加工・販売すれば、結果的にこれまで、捨てていた同然のミカンを、商品に変えられることにより、農家の経済や地域経済波及効果(雇用も含め)にもつながります。しかし、その道のりは非常に厳しいモノでありました。誰もがジュースづくりをしたことが無く、製造方法・行程や衛生管理、製品販売と次々と課題が持ち上がってきました。しかしながら倶楽部員たちは、ここでも、知恵を出し、汗を流し、この難局を乗り越えました。
 俺ん家ジュース製品なぜ、ジュース工場が必要だったのか、それは、ミカン栽培においては市場に出荷出来ないミカンが収穫量の約2割程度、毎年出てきます。それを、これまでは永遠と1キロあたり3〜5円で農協組織が集め加工されていました。農家の経営にはマイナスでありました。このことは、過去からの大きな課題であり、農家や後継者が安心してミカン経営を続けられる環境整備が必要であり、小さなジュース工場とはいえ、ソーシャルビジネスの手法で工場を立ち上げ稼働出来たことで、農家にはミカンジュース原料代としてキロあたり50円〜70円が支払いできています。今後、ミカン農家の経営上、大きなメリットがあります。

法人化で経営責任の明確化と経営判断のスピード化

 2006年には直売所『きてら』の売上げが1億円を突破、それまでのみなし法人のままでの経営には不安があり、取引上の事故や倒産ということがひとたび起これば、無限責任のままの経営体では、ソーシャルビジネスとはいえ、地域に大きな影響がでます。
 そこで、法人化に向け検討をし、最終的には、株式会社化を選択しました。法人化に向け、NPO法人、農業組合法人、農業生産法人、財団法人、株式会社等を検討する中で、住民誰もが参加(出資)が出来、経営責任が明確になり、スピーディーな経営判断ができ、新たな事業にも挑戦がしやすく、将来的に余剰金が発生すれば、新たな地域づくりのための再投資も可能になります。また、大きなリスクを抱え、出資して頂いています地域住民のみなんさんに、地域づくりの恵みが返せることができる株式会社を選択いたしました。
 今世紀に入り、社会課題解決のためのソーシャルビジネスの経営体として、利益追求型ではない株式会社は、行政や国民からも認知され、交付金や補助金などの公的資金の投入も積極的に行われるようになってきました。

2つのソーシャルビジネスの経営統合

2010年には、農業法人株式会社きてらと『俺ん家ジュース倶楽部』との、資本・経営統合を実現させ、さらに、地域内で増資を募り、ジュース工場を新設して、規模を拡大させた。また、2つのソーシャルビジネスの経営統合は、新しい事業への挑戦へとつながった。それは、都市と農村の交流施設『秋津野ガルテン』(2008年に交流で地域活性化を目指した住民出資の新たなソーシャルビジネス)内に、地元柑橘類を使った新商品開発と、農業体験の一環として柑橘を使用したお菓子づくりを体験できる『お菓子体験工房バレンシア畑』をオープンさせた。
 ようやく国の方も農業の政策転換の一環として、農業法人化、六次産業化にむけ、交付金・補助金制度も拡充され、ジュース工場新築時には農林水産省からのすすめもあり、小さな金額でありましたが補助金制度も利用しました。しかし、基本的には住民の出資が基本であります。



一般社団法人ふるさと未来への挑戦

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和歌山県田辺市上秋津4558-8
秋津野ガルテン 内

TEL 0739-35-1199