廃校舎の利活用を行政に提案したが...
秋津野マスタープランをまとめている最中、上秋津小学校が、平成18年に移転・新築されることが決まりました。当初、田辺市では老朽化した旧校舎は取り壊して更地にし、土地は宅地化して販売することを考えていました。しかし、地元、上秋津では「秋津野マスタープラン」策定過程で、住民の意見を取りまとめるうちに、
校舎を地域の拠点として残したいという意向が強いことがわかりました。そこで、住民が主体となって、木造校舎を保存・活用するという提案を、田辺市に「提案」しましたが、いくら保存したくとも先立つものがない。また、今後の行政の広域合併で学校統廃合で廃校になる校舎活用の悪しき前例を作りたくないと、いい返事は頂けなかった。
秋津野マスタープランが行政を動かす
平成14年10月に完成した『秋津野マスタープラン(素案)及びマスタープラン策定基礎調査報告』(以下『マスタープラン』と呼ぶ)は、
「地域社会の構造と意思決定システム」、「土地管理の現状と今後の土地利用」、「地域農業の活性化と地域資源の活用」に関して、
全世帯にアンケート調査を行いました。地方で行政が出ない住民主体で、これほどまでに徹底した調査を行ったことは全国的に見ても画期的なことであり、全住民の声を直接聞いたという意味で、大いに意義のあることであった。この調査結果から、今後、上秋津地域に本当に何が必要なのか?優先的に取り組む課題は?を確認した。
秋津野マスタープランで得られたデーターとプランや考えは、これまで廃校活用には絶対反対の行政をも動かし、現上秋津小学校跡地検討委員会設置となった。
この
マスタープランがなければ、
都市と農村の交流施設秋津野ガルテンの誕生は無かった。
地域資源活用で都市農村交流〜現上秋津小学校木造校舎利用検討委員会を発足
秋津野塾では平成15年、秋津野塾(地域住民)に加え、和歌山大学の教員や、他地域で先行事例に取り組むグループのリーダーらを招いて、40人ほどの「校舎活用検討委員会」を組織。約1年かけて、保存にかかる費用試算を含め、活用するための方法を検討した。その中で、木造校舎を拠点とする「秋津野ガルテン」という事業の構想がつくられてきました。当時の増田総務大臣も廃校となった旧上秋津小学校に足を運んで頂き、住民主体でまとめ上げた、廃校舎活用計画をヒヤリングして頂き、熱い激励と応援も頂きました。
本来なら、行政が中心的な役割を果たさなければならない、廃校跡地の活用や地域活性化計画であるが、上秋津では、地域住民主体で『地域資源を活かした都市と農村の交流事業』の計画書をまとめ上げ。田辺市との度重なる交渉の結果、田辺市議会の承認を得て、この校舎と土地は、約1億円で、上秋津地域(当時の社団法人上秋津愛郷会)への売却が認められました。
その後、
都市と農村の交流施設『秋津野ガルテン』の施設整備と運営を行う会社として、平成19年6月と9月に、
地域住民489名が出資、資本金は4180万円のソーシャルビジネスビジネスで事業を行う、農業法人株式会社秋津野を設立いたしました。
校舎・跡地は、田辺市より上秋津地区で(社団法人上秋津愛郷会)が買取り、農業法人株式会社秋津野が都市と農村の交流事業『秋津野ガルテン』として平成20年11月から事業が開始しました。
事業運営も行政等からの補助金もないを頂かない、また人材も派遣もない、完全民営で事業を進めています。
都市と農村の交流施設『秋津野ガルテン』の目的と事業
上秋津地域の農村が持つ自然環境・景観・文化など多様な地域資源を有効に活用し、都市住民のグリーン・ツーリズムなど農業体験の拠点、子どもたちの食育の場及び、団塊の世代等の田舎暮らしの受入等を目的とした長期滞在型拠点として、交流施設や宿泊施設を整備し、上秋津地区での農村と都市住民との交流を深めることにより、入り込み客数の増加を促進するなかで、農産物の地産地消の推進及び販路拡大を図り、将来的にも持続可能な農業形態を確立し、農をテーマとした交流活動により地域経済の活性化を図る。
農家レストラン
レストラン食材は、主に、地元直売所や廃園や放任園を復活させた野菜畑から農家レストランへ食材の供給行っている。当初、事業計画(農林水産省に提出した計画)では、年間9100名の来客予定であったが、オープン時から、年間40,000名以上の来客があり、都市住民と農村との出会いの場につながっている。地域経済においても大きな経済効果を上げています。
地域雇用においても女性を中心に、多くの雇用を生み出している。地場産食材の利用で農業の活性化、社会的課題である廃園復活、そして地域雇用の確保といったことも事業として成り立たせています。
また、同窓会利用や法事後などの仕上げの食事や地域団体などの利用も増えてきており、地域内利用での地域経済循環にもつながっています。
宿泊施設
宿泊のキャパシティーは32名と低いが、一日でも上秋津に泊まって頂くことにより、農村・農業の理解に進み出しています。年間宿泊数は2200名程度で推移しています。
夏休み、春休みには、若い家族連れが宿泊を頂いており、農業・農村の出会いや体験を行っています。また教育旅行等の受入も行い、農村の暮らしや、農業の体験なども行っています。その他、平成21年に発足した秋津野民泊の会とも連携をはかり、宿泊、交流をすすめるなかで、秋津野の里の農業の理解につながっています。
当社が主催する地域づくり学校や、様々な地域づくり研究・学習など、全国からこの地で学ぶ宿泊施設としても大きな役目を果たすようになってきております。
人材育成事業
ここ上秋津では古くから地域づくりが盛んで、多くの方や団体がその手法や知見を学ぼうと視察に訪れるようになってきました。秋津野ガルテンがオープン以来、毎年、2000名以上の地域づくり関係者が、視察や講演を聞きに訪れるようになってきました。「地域が人を育て、人が地域をつくる」といった私たちの一環とした考えを、平成20年からの3カ年、経済産業省の人材創出移転事業「秋津野地域づくり学校」を引き受け、全国から地域づくり関係者が訪れ、秋津野の地域づくりを学びました。また、平成23年〜25年には田辺市の地域づくり人材育成事業「紀州熊野地域づくり学校」も行われ、平成26年からは和歌山大学との連携で地域づくり学校〜地域戦略論がスタートしています。既に多くの卒業生を送り出し、社会において地域づくり人材として活躍するようになってきています。
農業体験・加工体験
1年間、みかんの実る里での農業体験や農産物加工体験にも年間2000名以上の方が訪れようになってきた。とりわけミカン収穫体験やジャムづくり体験も人気であり、平成22年には、直売所『きてら』と連携事業で秋津野ガルテン内に、地元産の柑橘を使用した加工体験や、スイーツ、ジャムの販売を目的とした、
お菓子体験工房バレンシア畑をオープンさせていまする。
市民農園・農園部
農村地帯で大きな問題になっています、廃園・放任園の再整備で、小区画の農園を貸し出す市民農園の開設。また野菜の生産・販売も行っています。また、ミカンの廃園を加工専用の柑橘畑に復活させ、将来はその柑橘を使い、俺ん家ジュース倶楽部やお菓子体験工房バレンシア畑との連携であらたな加工品開発につなげていきたいと考えています。すでに50アールあまりの畑を復活させ苗木を植え付けています。
その他にも地域農業の課題を解決するための事業として、農業者育成、ミカンのオーナー制度など新たなミカンの流通にも挑戦しています。